| 2000.2.19
1.要旨コーラルネットワーク東京事務局
 
  国内でのサンゴ礁調査は、これまでにもさまざまな研究保護機関で行われてきました。残念ながら、それらは非常に限られた地点での詳細な調査であり、各地の比較ができませんでした。リーフチェック1998は、国内では6〜9月に12地点で調査が行われ、広い範囲でのサンゴ礁の健康状態を初めて比較しました。しかしながら春にも調査が行われていたため、夏に発生した世界的規模でのサンゴ白化現象の影響をつかみきれませんでした。そのため、リーフチェック1999にはその全容が明らかになるという期待がされていました。
2.国内調査状況および結果概要リーフチェック1999は、国内では5〜10月に11地点で合計133人の参加者により行われました。新たに阿嘉島、久米島、石垣島、西表島で5地点において調査が開始されました。しかし、残念ながらさまざまな理由により6地点で調査ができませんでした。
 調査から生サンゴ被覆度(調査地における160カ所の底質データに占める生きているサンゴの割合)の減少が沖縄県内の広い範囲に渡っていることが分かりました。その度合いは調査地点ごとに異なりますが、これらは1998年の大規模なサンゴ白化現象の影響を示唆していると考えています。魚類・無脊椎生物調査では、沖縄島辺野古においてガンガゼ類が大幅に増加しており、サンゴの大幅な死滅と関連していると考えています。他の調査対象種でも個体数が大きく変化しているものもありますが、調査が多くてもまだ3年間であり、統計的に意味のあるデータとするにはもっと長い年数の調査が必要となると考えています。
 リーフチェック2000では、白化などによって悪化したサンゴ礁の健康度の回復が観察されると期待しています。どのようにすればサンゴ礁が回復するかを知るためには、より多くの場所で定期的に長期に渡って調査する必要があります。リーフチェックはこの要望に応えられる手段だと考えています。
 リーフチェックへの支援をよろしくお願いします。
 
 国内では以下のように調査が実施されました。
 
 1)沖縄県 沖縄島 辺野古崎平島
 
  調査日 5月15日
2)沖縄県 久米島 アカ下主催 LOVEジュゴンネットワーク (現 ジュゴンネットワーク沖縄)
 チームリーダー 棚原 盛秀 マリンガール
 チーム科学者 比嘉 展寿 琉球大学修士
 参加者総数 13名
 
 今回が二回目の調査でした。1998年6月13日の第一回調査は大規模な白化前だったので、今回初めてその影響が調査されました。
 サンゴ死骸の割合が非常に高く、生サンゴ被覆度が非常に低く、サンゴ礁の健康度は非常に悪化しています。1998年の白化が主な原因と考えられます。海綿が比較的多く観測されていますが、これらはサンゴ死骸の上に形成されており、サンゴの死滅に伴って発生したと考えられます。ガンガゼ類の個体数が非常に増加しており他の地点には無い特徴となっています。死滅したサンゴにはガンガゼ類の食料となる藻類が発生するので、それに伴う増加の可能性があると考えています。オニヒトデが見られていますが、これらは移動中のものか、残されたサンゴに集まってきたかのいずれかではないか、と考えられます。チョウチョウウオ類、ハタ類の減少も大きいですが、後者は漁業の影響が考えられます。
いずれも今後の推移を見守り、サンゴ礁の健康度との関係を探る必要があると考えます。
 昨年観測されたジュゴンは、今回は観測されませんでした(別の日には観測されています)。
 
  調査日 6月4日
3)沖縄県 西表島 網取湾沖ヨナ曽根主催 ダイブ・エスティバン
 協力 コーラルネットワーク
 チームリーダー 川本 剛志 ダイブ・エスティバン
 チーム科学者 宮本 育昌 コーラルネットワーク
 参加者総数 12名
 
 今年が初めての調査でした。昨年の白化前には生サンゴ被覆度が高かったと考えられる場所を調査地に選びました。
 1998年の白化によりほとんどのサンゴが死んでしまったと思われていたのですが、実際にはサンゴ死骸の割合がかなり高いのと同時に生サンゴ被覆度もある程度あり、サンゴ礁の健康度は中程度であることが分かりました。
 
  調査日 6月18日
4)沖縄県 石垣島 御神崎灯台下主催 水中生物ネットワーク・ブルーポイント
 チームリーダー 伊東 徹雄 水中生物ネットワーク
 チーム科学者 横地 洋之 東海大学助教授
 参加者総数 11名
 
 今回が三回目の調査でした。前回の調査は1998年6月12日で、大規模な白化前でした。
 サンゴ死骸の割合が比較的高く、生サンゴ被覆度も低下しており、サンゴ礁の健康度は中程度まで悪化しています。
 1998年の白化の影響があると考えられます。
 
  調査日 6月27日
5)東京都 三宅島 富賀浜&伊ケ谷湾カタン崎主催 コーラルネットワーク
 チームリーダー 佐伯 信雄 ダイブクリエイト
 チーム科学者 吉田 稔 環境調査会社代表
 参加者総数 12名
 
 今回が二回目の調査でした。前回の調査は1998年6月19日で、大規模な白化前でした。
 水深3mでのサンゴ死骸の割合が高く、浅い場所で白化の影響が大きかったと考えています。
 サンゴ礁の健康度はおおむね良好でした。
 
  調査日 7月17日
6)沖縄県 石垣島 荒川下主催 日本海水魚保護ネットワーク
 協力 スナッパーダイビングセンター
 チームリーダー 山本 英生 34゜NORTH
 チーム科学者 市川 清士 駒澤大学講師
 参加者総数 23名
 
 今回が二回目の調査でした。
 サンゴ被覆度が高く、サンゴの健康度は良好な状態を保っていました。これは三宅島は緯度が高いため、1998年の世界的な白化の原因と考えられている海水温度の上昇がサンゴが死滅する温度に至らなかったためと考えられます。
 
  調査日 8月10日
7)沖縄県 石垣島 崎枝沖主催 コーラルネットワーク
 チームリーダー 佐伯 信雄 ダイブクリエイト
 チーム科学者 吉田 稔 環境調査会社代表
 参加者総数 6名
 
 今年が初めての調査でした。
 サンゴ死骸の割合が低く、サンゴ礁の健康度はおおむね良好と考えられます。
 
  調査日 9月6日
8)沖縄県 西表島 鹿川中の瀬主催 環境庁・コーラルネットワーク
 チームリーダー 佐伯 信雄 ダイブクリエイト
 チーム科学者 長谷川 均 国士舘大学助教授
 参加者総数 12名
 
 今回が三回目の調査でした。
 サンゴ死骸の割合が低く、サンゴ礁の健康度はおおむね良好な状態を維持していると考えられます。ハタ類が多く観察されています。
 
  調査日 9月25日
9)沖縄県 座間味島 新田浜主催 ダイブサイト・ノグチ
 協力 コーラルネットワーク
 チームリーダー 野口 定松 ダイブサイト・ノグチ
 チーム科学者 吉田 稔 環境調査会社代表
 参加者総数 12名
 
 今年が初めての調査でした。
 サンゴ死骸の割合が低く、サンゴ礁の健康度はおおむね良好であると考えられます。シャコ貝類が多く観察されています。
 
  調査日 9月28日10)沖縄県 阿嘉島 ニシハマ主催 座間味村役場むらおこし課
 チームリーダー 宮平 秀保 ざまみダイビングセンター
 チーム科学者 下池 和幸 (財)阿嘉島臨海研究所
 参加者総数 16名
 
 今回が二回目の調査でした。前回の調査は1998年9月25日に行われています。
 10mの調査ではサンゴ死骸の割合が高めなです。何が原因でサンゴが死んだのかは、より詳しい調査が必要だと考えます。
 サンゴ礁の健康度はおおむね良好であると考えられます。
 
  調査日 9月29日主催 座間味村役場むらおこし課
11)沖縄県 石垣島 伊土名沖チームリーダー 宮平 秀保 ざまみダイビングセンター
 チーム科学者 下池 和幸 (財)阿嘉島臨海研究所
 参加者総数 9名
 
 今年が初めての調査でした。
 サンゴ礁の健康度はおおむね良好であると考えます。シャコ貝類、ナマコ類が比較的多く観察されています。
 
  調査日 10月25日
主催 ヘリオス酒造・コーラルネットワーク・マリンメイト
 チームリーダー 佐伯 信雄 ダイブクリエイト
 チーム科学者 吉田 稔 環境調査会社代表
 参加者総数 8名
 
 今年が初めての調査でした。
 調査データを入手できていません。 これまでの調査全体は上の表にまとめてあります(一部抜けあり)。
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