1.国内調査状況および結果概要
1)ポイント 沖縄県 久米島 はての浜
調査日 |
5月24日 |
ポイント |
沖縄県 久米島 はての浜 |
チームリーダー |
川本剛史(ダイブ・エスティバン) |
チーム科学者 |
入川暁之(沖縄県環境科学センター) |
主催 |
ダイブ・エスティバン/コーラルネットワーク |
参加者 |
9名 |
【調査結果概要】
3回目の調査でした。
【底質】
造礁サンゴに減少傾向が見られましたが、最近死んだサンゴのカウント値や造礁サンゴ被度に影響を与える生物の出現状況から、1年以内に生じた被度低下は小規模なものと考えられます。ソフトコーラル、岩及びシルトの数値がほぼ一定であることからも、調査地点周辺ではサンゴ礁生態系に深刻な打撃を与える要因は現時点では見られないと考えられます。
【魚類】
その他ブダイ類の出現頻度が増加しています。造礁サンゴ、多肉質海藻の被度との関連は不明です。
【底生性無脊椎動物】
浅場での変化が記録されました。ガンガゼ属の減少、パイプウニの増加が見られましたが、両者に相関は見られません。シャコガイ属については捕獲圧と思われる個体数低下が記録されました。
【造礁サンゴ類】
調査地点周辺の造礁サンゴ群集は久米島内でも良好な状態にあると思われます。枝状ミドリイシ属が優占する深場(水深12m)での多様性は高く、群集組成は慶良間諸島に近い傾向があります。浅場(水深5m)では白化減少に耐性を示すものが多く、今後の被度変動を注視する必要があります。被度は沖縄本島よりやや良好で、八重山海域よりは低く、深場で29%、浅場で9%でした。
【Land-useとの関連】久米島の平成12年現在の人口は9300人余りであり、海域に影響を与える可能性のある土地利用は港湾整備とサトウキビ栽培が挙げられます。調査地点一帯では陸域の影響は小さいと思われますが、小規模な漁労は行なわれています。また、一般向けのガイドコースではない為、レジャーダイビングによる利用頻度も低いと考えられます。
【最近の撹乱】
現時点で、調査地点における特記すべき攪乱の進行は認められません。オニヒトデ、シロレイシガイダマシ、テルピオス、腫瘍や病気といった原因で造礁サンゴの大量斃死が起こっている様子は見られませんでした。
2)ポイント 和歌山県 串本 双島
調査日 |
6月1-2日 |
ポイント |
和歌山県 串本 双島 |
チームリーダー |
池田慎也(コーラルネットワーク) |
チーム科学者 |
野村恵一(串本海中公園センター) |
主催 |
コーラルネットワーク |
協力 |
シートピア |
参加者 |
21名 |
【調査結果概要】
3回目の調査でした。
調査地点のサンゴ被度はこの3年間は大きな変化はなく、10%以内の年変動量で推移しています。水深帯別に詳述すると、3m帯では、サンゴ食巻貝であるヒメシロレイシガイダマシが増殖する前の一昨年は70%であったのが、貝の増殖が始まった昨年は61.9%に減少し、その後、貝駆除により被害が減少したことによりサンゴ群集は成長に転じ、本年度は64.4%にまで回復しています。今後、台風波浪や貝の被害がなければ、来年の調査時には、被度は2年前の水準に再び達することが予想されます。一方、10m帯では、一昨年、昨年共に被度は33.8%と変化はありませんでしたが、今年は7%ほど減少しました。本年度の調査では、この1年間に死んだと思われるサンゴはほとんど観察されていませんので、サンゴの減少は何か重大な攪乱を受けたためではなく、ラインの若干のズレに基づくものと思われます。海藻の被度は3m帯では微増、10m帯では大きく増加しています。
イセエビは未出現でしたが、これはイセエビ漁の漁獲強度の高さを表していると考えられます。仮に漁業の影響が全くなかったとしたら、かなりの数がカウントされたことでしょう。実は、県下の高産額は、乱獲により保たれており、今や、そのツケを払う時期が来ているように思われます。また、オニヒトデも未出現でしたが、本種は沖縄の一部の海域で大発生しており、その黒潮流域下においても増加傾向にあります。串本でも水温環境の良い沖の瀬では目立って来ていましたが、調査地点のような浅瀬にも、今後出現する可能性があります。本種のサンゴ摂食量は、ヒメシロレイシガイダマシよりもはるかに大きく、サンゴ群集に与えるインパクトが大きいので要注意です。ガンガゼ類は当地では増加傾向にあり、その食害により、場所によっては磯焼けを生じさせています。
3)ポイント 鹿児島 与論島 茶花港北西沖
調査日 |
6月9日 |
ポイント |
鹿児島県 与論島 茶花港北西沖 |
チームリーダー |
和田聖子(プリシアリゾートダイビング) |
チーム科学者 |
岩瀬彰啓(琉球大学大学院) |
主催 |
与論ダイビング事業組合/コーラル・ネットワーク |
参加者 |
20名 |
【調査結果概要】
2回目の調査でした。
造礁サンゴの被度は、浅場で3%から4%に、深場で6%から9%に、僅かながらではありますが増加していることがわかりました。調査地点の水深5mではサンゴ礁への人為的なダメージは確認されませんでした。
底質については、昨年の調査結果との比較において特記すべき変動を示したカテゴリーは見られませんでした。そしてこれらの値は急激に増加、もしくは減少はしないものと考えられます。根拠を以下に示します。
・調査対象域内で確認されたオニヒトデは1個体であった。
・周辺域を含めた観察においてもシロレイシガイダマシ等のサンゴポリプ捕食性貝類は数個体しか発見されなかった。
・ブダイ類等によるサンゴへの食痕状況は軽微であり、回復途上の食痕も多く見られた。
・調査対象域内の岩のポイントは高いが、周辺域を含めた観察では新しく加入してきているサンゴの数は少なかった。
次に魚類の結果については、チョウチョウウオやブダイなどのサンゴ礁に依存している魚は見られたものの、ハタ類やウツボなどの食物連鎖の頂点に近いものが見られませんでした。さらに長い期間の結果から考察する必要があります。
無脊椎動物の結果については、パイプウニが16個体、シャコガイが14個体と共に昨年よりも数が多く見つかりましたが、複数年のデータをみた上で自然の変動なのか増加なのかを判断する必要があります。
調査地点の水深12mでもサンゴ礁への人為的なダメージは確認されませんでした。
底質については砂のポイントが約20ポイント違うが、昨年の調査の前に台風が通っている事からその影響だと考えられます。
魚類と無脊椎生物については5mと同様です。
4)ポイント 静岡県 田子 白崎
調査日 |
9月28-29日 |
ポイント |
静岡県 西伊豆町 田子湾 白崎 |
チームリーダー |
宮本育昌(コーラルネットワーク) |
チーム科学者 |
小松恒久(越前松島水族館) |
主催 |
コーラルネットワーク |
協力 |
シーランドダイビングサービス |
参加者 |
14名 |
【調査結果概要】
3回目の調査でした。
初日に予備調査として調査地の概況確認と、調査訓練を実施しました。
調査を行っている田子湾の白崎にあるサンゴ群落は、伊豆半島でも数少ない造礁サンゴの分布北限域のサンゴ群落です。
最初に底質調査です。田子のサンゴ群落はほとんどエダミドリイシ一種で構成されています。しかし,群落内の被度は、田子は6mで20%、9mで32%と相対的に低い値に留まっています。また、数は少ないですが、エダミドリイシ以外の種が多く見られました。また,リーフチェックの底質区分では転石となるサンゴの死骸が多く見られました。これらがどんな影響でいつ死んだかは不明です。
続いて無脊椎動物です。調査対象種はオトヒメエビとガンガゼ属のみ出現しました。このなかでもガンガゼの数は多いと思われます.今回の調査では6mの調査区域に634個体(約1.5個体/1u),9mは564個体(約1.4個体/1u)でした。ガンガゼの食害跡が確認されたことから、今後のガンガゼの数の変動については注意が必要です。
次に魚類調査ですが,リーフチェック標準対象種はほとんど出現しません。そこでイトヒキベラとソラスズメダイを追加しました。この2種はサンゴ群落を中心に生息しているわけではありませんが,田子のサンゴ群落で最も多く見られ,間接的にサンゴ群落と関係していると思われます。そのためこの2種の数の変動がサンゴ群落の健全度をみるのに適しているとも思われます。さてデータをみてみると,ソラスズメダイは6mで475個体,9mで535個体でした。イトヒキベラは6mで0個体,9mで48個体でした.また,チョウチョウウオ科は6mで54個体,9mで85個体でした.田子でのチョウチョウウオ科は一般に死滅回遊魚といわれるもので冬には死んでしまいます.しかし,これらの種が夏の間に多く見られるということはサンゴ群落が健全であるからといえると思われますので今後の変動に注意していかなければならないと思います。
次にサンゴ群落へのダメージですが、堤防から近いということもあり,おもりや釣り糸といった釣り人によるごみが多く見られました。
5)ポイント 沖縄県 黒島 阿名泊沖
調査日 |
10月4-5日 |
ポイント |
沖縄県 黒島 阿名泊沖 |
チームリーダー |
宮本育昌(コーラル・ネットワーク) |
チーム科学者 |
島 達也(八重山海中公園研究所) |
主催 |
コーラル・ネットワーク/八重山海中公園研究所 |
協力 |
黒島ダイビングパーク |
参加者 |
8名 |
【調査結果概要】
初めての調査でした。
調査本番に先立ち、ポイント選定を10/4に行いました。
底質の造礁サンゴの被度は水深3mで39%、水深7mで37%でした。水深3mは根のトップの平坦端部にあたり、テーブル状(直径0.3-1.2m)、枝状のミドリイシ属のサンゴがほとんど被覆しているように見えました。水深7mは急に落ちる根の脇の裾にあたり、根の上から折れて落ちたミドリイシ属が枝状に成長していますが、かなり粗に見えました。水深7mにかなり見られる転石は多くが死んだ枝状サンゴでした。
上の見た目の違いは魚類の調査結果にも反映されています。チョウチョウウオとブダイが水深3mは20匹以上、7mは7匹と3倍強違います。根の上や根の脇の斜度が緩くてサンゴがよく成長している場所に、チョウチョウウウオ科やブダイ科が多かったです。ブダイに関しては下から上に泳ぎ回っているものも結構いたのですが、根の裾あたりには少なかったので、この差になりました。
無脊椎生物の結果の特徴は、数十センチサイズのシャコガイ属が複数見られたことです。この周辺の地域はアンカリングしますが、調査地にはそれによるサンゴの破壊は見られませんでした。また、ゴミ等もありませんでした。
6)ポイント 沖縄県 久米島 阿嘉下
調査日 |
10月5日 |
ポイント |
沖縄県 久米島 阿嘉下 |
チームリーダー |
川本剛史(ダイブ・エスティバン) |
チーム科学者 |
入川暁之(沖縄県環境科学センター) |
主催 |
ダイブ・エスティバン/コーラル・ネットワーク |
参加者 |
9名 |
【調査結果概要】
2回目の調査でした。
1回目の調査は世界的規模の白化が発生した直後の1999年に行われました。その後、海況の関係で調査ができておらず、3年ぶりの調査実施となりました。
造礁サンゴの被度は水深5mでは28%、12mでは26%で、前回より7-9%向上していました。1998年以前はかなり被度が高かったと思われていますので、そこまでには回復していません。しかしながら最近死んだサンゴも確認されていないので、今後も徐々に回復していくことが期待されます。魚類についてはチョウチョウウオ科が前回の半分程度しか確認できませんでした。この原因についてははっきりしません。今後の継続的な調査が必要です。無脊椎生物についてはシャコガイ属が合計4個体、パイプウニが1個体確認されたに留まりました。
7)ポイント 沖縄県 石垣島 桜口
調査日 |
3月10日 |
ポイント |
沖縄県 石垣島 桜口 |
チームリーダー |
宮本育昌(コーラル・ネットワーク) |
チーム科学者 |
吉田稔(有限会社海游) |
主催 |
コーラル・ネットワーク |
協力 |
特定非営利活動法人 日本安全潜水教育協会(JCUE) |
|
フジマリンサービス |
参加者 |
11名 |
【調査結果概要】
初めての調査でした。
〔5mライン〕
目視によるサンゴ類の被度は50〜60%と高被度で、サンゴ類の出現種類数も多かったです。直径30〜50cmサイズの卓状、枝状ミドリイシ類を中心としたミドリイシ類優勢のサンゴ相です。その他、ハナヤサイサンゴ類、アナサンゴモドキ類、塊状ハマサンゴ類、キクメイシ類が見られました。調査範囲においてオニヒトデやサンゴ類の病気等は見られませんでした。サンゴ食貝類のシロレイシガイダマシが数個体見られ、その食痕が少し確認できました。5mライン近傍の調査範囲外ではオニヒトデが4個体確認され、その食痕は30〜40個見られました。
〔9mライン〕
目視によるサンゴ類の被度は30〜40%であり、サンゴ類の出現種類数が多く多様性に富んでいました。直径30〜40cmサイズの枝状ミドリイシ類が優勢するミドリイシ類優勢のサンゴ相でした。その他、リュキュウキッカサンゴ、被覆状コモンサンゴ類、ソフトコーラル類などが確認できました。サンゴ類の病気は見られませんでした。オニヒトデが調査範囲内に2個体見られ、またその食痕も10〜30個見られました。サンゴ食貝類は見られませんでした。また、その食痕等も見られませんでした。
〔総評〕
今回の調査海域は、サクラグチという航路の入り口近傍に当たりクシ状の複雑な地形の礁斜面です。サクラグチ周辺は、航路の入り口であって船の出入りも多く、冬場はダイビングポイントになり電燈潜りの漁場としても使われ利用頻度の高い海域です。サクラグチ周辺は市街地に隣接した沿岸域であり、慢性的に生活雑排水や宮良川の赤土の影響を強く受ける海域です。しかも、1998年のサンゴの白化現象でミドリイシ類が全滅しましたが、その後順調な回復を続け現在のようなサンゴ類の被度も高く景観も美しい状態になっています。今回最も注目すべきはオニヒトデの出現状況です。八重山海域は現在オニヒトデ大発生の初期段階であり局所的に多く発生している海域もあります。今回は調査範囲周辺も含めオニヒトデが6個体、その食痕数は40〜70個程度とやや多く、注意すべき海域であると思われます。今後の調査によって、その変化の仕方やサンゴ類の動態などを正確に見ていくことは重要な資料となると考えます。
8)ポイント 沖縄県 小浜島 小浜北
調査日 |
6月8日 |
ポイント |
沖縄県 小浜島 小浜北 |
チームリーダー |
野口定松(ダイブサイトノグチ) |
チーム科学者 |
吉田 稔(有限会社海游) |
主催 |
ダイブサイトノグチ / コーラル・ネットワーク共催 |
参加者 |
9名(TS除く) |
【調査結果概要】
3mライン・・・サンゴ類の全体の被度は、50〜75%と高く、サンゴが一面を被い景観も良くなっている。直径30〜50cm大の卓状ミドリイシ類が優占している。これら卓状ミドリイシ類の良好な生長を確認できる。直径5〜10p大の散房花状ミドリイシ類も比較的多く見られる。サンゴ類の白化は見られない。サンゴ食生物の食痕等も見られない。病気等も見られない。
6mライン・・・サンゴ類の全体の被度は、50〜60%と高い。3mラインの被度と比較すると若干低いと思われる。3mラインと同様に直径30〜50cm大の卓状ミドリイシ類が優占している。これら卓状ミドリイシ類の良好な生長が確認できる。サンゴ類の白化は見られない。貝類の食痕が多少見られる。病気等も見られない。
総評・・・八重山のサンゴ礁は、オニヒトデの大発生、サンゴ白化現象、慢性的な赤土汚染などの脅威にさらされている。今年で3年目の小浜RCにおいても、調査地点がどのような状況であるか大変興味がもてた。総合的な評価は、すべて良好な状態で推移しているといえる。魚類については、昨年と同じような出現状況であった。今年は特に調査対象種で今まで見られなかったカンムリブダイが3個体も見られたことが特記すべきことであろう。
以前は八重山海域にも多く見られた種であるが、漁獲圧によって激減している。無脊椎生物についても、昨年と同様の出現傾向を示している。
底質に関してはサンゴ類のポイントが毎年のように向上している。白化後減少したミドリイシ類が順調に回復していることがデータからもよく読みとれる。
6mラインでソフトコーラルが6ポイント増加したことは、前回と少しラインがずれたことによるものであると思われる。
9)ポイント 沖縄県 西表島 網取湾ヨナ曾根
調査日 |
7月29日 |
ポイント |
沖縄県 西表島 網取湾ヨナ曾根 |
チームリーダー |
春川 淳(シーブロス) |
チーム科学者 |
吉田 稔(有限会社海游) |
|
伊谷 玄 |
主催 |
ダイブサイトノグチ / コーラル・ネットワーク共催 |
協力 |
ブルーポイント / コーラルネットワーク |
参加者 |
20名(TS除く) |
【調査結果概要】
6月に予定されていた水中生物ネットワーク/ブルーポイント共催のRCがTLの都合で中止となっていたため、継続した調査データを記録させて頂くために、同一ポイントを調査地としました。
西表島北西部の網取湾にあるヨナ曾根ポイントは、陸路での移動が困難な人口密集地から遠く離れた地域の沖合いにあります。八重山方面のRC調査地の多くがそうですが、ここも健康度の高いサンゴ礁域の部類に入ると思います。
今回のRCで、調査ポイントの造礁サンゴ(HC)の被度が、特に浅場でかなり回復が進んでいることがわかりました。
口頭ですが、
・このエリアでは特にエダサンゴの仲間の回復が著しく、1年間で数cm以上成長するものも確認されている。
・チョウチョウウオ/その他ブダイ以外の魚類や無脊椎生物のカウントが少ないのは漁獲圧によるものと思われる。
とのTSからのコメントがありました。
西表島ヨナ曾根は、RCが各国で開始されてから唯一国内で毎年継続調査されているポイントです。
'97年からのHC被覆度経年変化を紹介しておきますが、浅場のデータしか全ての年のものが手元になかったのでご容赦願います。台風や白化の影響は特に浅場で強かったと思いますので、ご参考まで。
1997年 58.8% 良好な時期。調査後の8月に強い台風がヨナ曾根を直撃。
1998年 37.5% 前年の台風による影響で被覆度が低下。調査後の夏〜秋にかけて海水温上昇によるサンゴの白化が起きる。
1999年 22.5% 前年の白化現象で死に至ったサンゴ(RKC)が多かった。
2000年 26.9% 僅かながら回復。
2001年 34.4% 順調に回復。
2002年 52.5% かなり順調に回復。
先日の台風16号によって、西表の鳩間島付近で枝状ミドリイシの多くが折れてしまい、悲惨な状況になっているとの情報が石垣の知人(ダイビングガイド)からありました。陸海の地形によって台風による海底への影響は大きく変わるようですが、ヨナ曾根ポイントが調査後どうなったかは未確認です。
10)ポイント 沖縄県 西表島 鹿川湾中の瀬
調査日 |
11月23日 |
ポイント |
沖縄県 西表島 鹿川湾中の瀬 |
チームリーダー |
野口定松(ダイブサイトノグチ) |
チーム科学者 |
吉田 稔(有限会社海游) |
主催 |
ダイブサイトノグチ/コーラルネットワーク共催 |
参加者 |
13名(TS除く) |
【調査結果概要】
〔 6m 〕
サンゴ類の被度は50〜60%であり、直径40〜60cmの卓状ミドリイシ類が優先している。
その他スリバチサンゴ類、リュウキュウキッカサンゴ類など多くの種類のサンゴが確
認できた。サンゴ類の白化現象、および、病気は見られなかった。
〔10m 〕
サンゴ類の被度は60〜70%であり、6mラインと比較して高い。
被覆状のスリバチサンゴ類、リュウキュウキッカサンゴ類、コモンサンゴ類が優先し
ている。その他、卓状ミドリイシ類も多く見られた。
サンゴ類の白化、および、病気は見られなかった。貝類(シロレイシガイダマシ)の食痕が数ヶ所で見られた。
また、直径5cm程度の新規加入のミドリイシ類も1m^2あたり2〜3群体見られた。
〔総合コメント〕
鹿川中の瀬RC開始から4年が経過し、サンゴ類の被度は確実に増加し続け、台風被害後順調に回復している。これらサンゴの動態が定量的にデータとして記録されたことは非常に有意義なことと思われる。
現在、沖縄本島地方やケラマ諸島などでオニヒトデの大発生が報告されており、当海域への拡大が懸念されているが、鹿川のオニヒトデは正常な生息数であると思われる(オニヒトデの確認はない)。
近年、当ポイントでのマンタの出現頻度が多くなったことで、ダイビング業の過剰利
用によるサンゴ類への撹乱(アンカーによる被害、ダイバーのフィンによる被害等)が見られ
たが、今後さらに多くなることが心配されるため、早めの総合的な対策が必要であると思われる。
11)ポイント 沖縄県 沖縄島 大度海岸沖
調査日 |
12月8日 |
ポイント |
沖縄県 沖縄島 大度海岸沖 |
チームリーダー |
宮本育昌(コーラル・ネットワーク) |
チーム科学者 |
山里祥二((財)沖縄県沖縄県環境科学センター) |
主催 |
コーラルネットワーク |
参加者 |
14名(TS除く) |
【調査結果概要】
底質調査では、造礁サンゴの被覆度は水深3mで10.6%、水深9mで16.3%と、サンゴ礁の健康度としてはややダメージを受けている状態でした。1998年の白化現象の影響で、現在は塊状のイシサンゴの仲間がほとんどで、ブダイの食痕が多く見られました。ミドリイシの仲間は白化でほとんどが死滅しましたが、今回の調査では直径1-10cm程度の若い個体が多く見られたことから、海の状態が良ければ数年でサンゴ礁の健康度が向上すると期待できます。
魚類調査では、チョウチョウウオの仲間、コショウダイの仲間、ブダイの仲間、ウツボの仲間が観察されました。いずれもあまり多くありません。チョウチョウウオの仲間に関しては造礁サンゴの被覆度が低いことに関連していると考えます。
無脊椎生物調査では、ガンガゼの仲間、パイプウニ、シャコガイの仲間が観察されました。ウニの仲間は水深3mの方が水深9mよりも多く確認されましたが、これは調査地の地形が大きな根が連続し、水深9mの調査ラインの多くで比較的切り立っていることから、ウニの仲間の生息には不適だからと考えられます。
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