コーラル・ネットワーク 2005年度 活動報告書
コーラル・ネットワーク
2006年4月8日
【運営体制の変更】
 2005年度の活動は運営部員15名、一般会員48名で開始した。
 昨年度までの組織(運営は運営委員が行うが、代表・副代表・会計からなる幹事4名が最終決定権を持つ)を変更し、決議機関として運営部会を、運営補助として事務局を設置した。会員管理、会計等を行う事務局は4名で担当した。9月までこの体制で活動し、10月より対外的な利便性を高めるために宮本育昌氏を事務局長と任命した。決議の決定権は引き続き運営部会が持つ。
 新年度もこの体制で行う予定である。2006年4月8日現在の一般会員数は33名、うち12名が運営部員である。

【リーフチェック活動】 
      
【その他の活動(セミナー、展示会等)】についてはこちらから
総括:
 2005年度は、年度始めに予定していた20箇所のうち、19箇所で無事リーフチェック(RC)調査を終えることができた。やむをえず中止したのは5月に予定していた久米島阿嘉下である。久米島は11月に予定していたタケンチでの調査も海況によりアーラ沖に変更している。しかしながら、規模を縮小しているものの島の周辺のモニタリングは継続することができている。
 噴火により調査を中止していた三宅島で6年ぶりに実施できたのは喜ばしい。また2005年度には新しい調査ポイントとして、現在大きな社会問題となっている埋め立て予定地の大浦湾と泡瀬干潟(両地点とも沖縄本島周辺)が加わった。沖縄本島砂辺では5月に8年ぶりにコーラル・ネットワーク主催でリーフチェックを実施したが、その後、2006年の埋め立て計画を受けて地元のダイビングサービスを中心に「砂辺のサンゴを見守る会」が発足され、彼らが中心となって改めてNo1、カリフォルニア、遺跡の3箇所で調査を継続して行うという新体制になることになった。
 オニヒトデやシロレイシガイダマシの影響、台風の影響などを受けている地域が多々あり、いずれの地点でも今後の長期モニタリングが必要である。
略語一覧; TL:チームリーダー、TS:チーム科学者、CN:コーラル・ネットワーク、
RC:リーフチェック、HC:ハードコーラル

1.沖縄県 沖縄本島・砂辺  5/1(日)

 CNが主催。本ポイントでのRC調査は8年ぶりであった。TSは入川暁之氏(琉球大学大学院)、豊島淳子氏(美ら海水族館)、安部真理子(CN)の3人が、TLは渡辺敬久(CN)がつとめた。一般から5名の参加があり、計7名で実施。サンゴのHC比率は前回この海域で調査を行った1998年と同じ程度で3.75−11.3%と低い状態のままだった。

2.和歌山県 田辺・西崎  5/29(日)
 なみよいくじら、スタードルフィンズ、CNの3者共催で実施。TSは近藤茂則氏(大阪コミュニケーションアート専門学校教務、水産増殖専攻)、TLは冨弥充(CN)がつとめた。一般から16名、CNからは2名の参加があった。HCのほとんどはテーブル状のサンゴであったが、低水温のせいか昨年は80%を誇ったHC比率が半減していた。死んだサンゴの上ではフクロノリがたくさん付いているのが観測された。

3.沖縄県 小浜島・小浜北  6/11(土)
 ダイブサイト・ノグチとCNが共催。例年通りTLは野口定松氏(ダイブサイト・ノグチ)、TSは吉田稔氏(海遊)がつとめた。今回の調査では、南風がやや強く(10m程度)、梅雨前線の活動も活発で時折強い雨が降る状況下ではあったが、島の北側のポイントだということもあり、さほど問題なく調査は行えた。2004年は悪天候により中止(鹿川へ振り替え)だったため、2年ぶりの調査となったが、底質の調査では、HCのポイント数が2年前の約1.5倍(2003年:48%、2005年:63%)になり、非常に健全な状態が保たれていることが確認された。病気やオニヒトデの食痕も見当たらなかった。参加者は全部で10名(うち、初参加3名)。

4.鹿児島県 与論島・茶花港北西沖  6/11(土)
 与論島ダイビング事業組合とヨロン島観光協会事務局が共催。TSは入川暁之氏(琉球大学大学院)がつとめ、地元のダイバー11名の参加があった。2000年から本ポイントで島をあげて実施し続けているこの活動に対する地元の人の関心が高まってきたことを示していると思われる。サンゴ類の回復は緩やかに進んでおり(HC比率は3mライン7.5%、10mライン13.1%)、目に見える変化が現れるにはもう少し時間が必要である様子。対象生物の長期的な記録によって個体数の変動幅が把握できれば「大発生」などの異変に対する有効な情報となるため、RC活動は重要な意味を持つとのコメントを受けた。
5.沖縄県 与那国島・空港北  6/18(土)
 ダイビングサービスFromWest、CNが共催。TLは田島直人氏(FromWest)、TSは例年通りの吉田稔氏(海遊)に加えて水産庁西海区水産研究所の渋野拓郎氏にも参加いただいた。魚類では大型のメガネモチノウオやナガブダイが見られるなど、乱獲等の影響は少ない。HC比率は46.3%、49.4%と良好であるが、サンゴ類の幼生加入量が非常に少なかった。CNからは1名参加。

6.和歌山県 串本・双島  6/25-26(土日)
 CNが主催し、シートピア串本が協力。例年通り、TSは野村恵一氏(串本海中公園センター)、TLは池田慎一(CN)が担当した。当初の開催予定日が台風のため日程変更を余儀なくされたものの、総勢17名の参加で無事終了。今年の調査では台風被害が目立ち、3mラインでは昨年までは60%以上を記録していたHC比率が33.8%にまで下がった。また串本近辺ではオニヒトデの生息数が増加しているので今後も注意が必要である。
7.東京都 三宅島・富賀浜  7/23(土)
 日本海水魚保護ネットワークが主催。TLは山本英生氏(日本海水魚保護ネットワーク)、TSは鈴木倫太郎氏(駒沢大学応用地理研究所)がつとめた。8名のボランティア・ダイバーが参加。CNからは2名が参加した。雄山噴火のため6年間調査を中止していたが、今年より再開した。
 朝日新聞社、読売新聞社、毎日新聞社、共同通信社から計7名の記者・カメラマンが取材に来ていた。調査ポイントは島の南東部の富賀浜で、通称富賀礁No.1(3mライン)と呼ばれているサンゴ群生を中心に調査を実施した。HC比率45%と非常に高く、また造礁性サンゴ7種が観察され、多様性の大きい健全な海域であることが確認でき、また新規加入のサンゴ群体が目立った。噴火の影響として懸念された火山灰由来のシルトや泥は今回の調査では見られなかったが、今後、土石流対策として多数作られた砂防ダムや、火山性ガスによる樹木の立ち枯れなどによって、山の保水力が落ちていることが予想されるので、淡水や土砂の流入による沿岸部海域への影響が懸念される。
調査の模様は各紙のWebサイトに掲載された。
http://www.asahi.com/national/update/0724/TKY200507240265.html
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050724i416.htm
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/tokyo/archive/news/2005/07/25/20050725ddlk13040052000c.html
日本海水魚保護ネットワークのHPでも報告されている。
http://www3.ocn.ne.jp/~n34north/RCindex.html

8.沖縄県 沖縄本島・辺野古 9/23(祝)
9.沖縄本島 大浦湾  9/23(祝)
 ジュゴンネットワーク沖縄、ジュゴン保護基金委員会、CNが共催し、じゅごんの里、マリンガールの協力のもと行った。二手に分かれて辺野古と大浦湾の調査を実施した。辺野古のTSは中谷誠治氏(亜熱帯総合研究所)、入川暁之氏(琉球大学大学院)が担当、大浦湾のTSは安部真理子(CN)が担当。TLは両ポイントともジュゴンネットワーク沖縄/マリンガールの棚原盛秀氏が兼任。ボランティア23名(陸上待機1名、船頭3名、TS3名含む)の参加。沖縄タイムズに記事が掲載された。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200509241300_03.html
 辺野古沖のサンゴは2004年と比べあまり回復してなかったものの、生後2年くらいの小さな群落が数多く観察された。今後の継続的観察が必要で、またHC比率が昨年より低いのはRCで用いているライントランセクト法の限界とも思われるので来年からは方形枠調査との併用などが望ましい。大浦湾は今年から開発した調査ポイントであり、礁斜面ではなく湾内に位置している。100mライン沿いにはユビエダハマサンゴの群落が見られ、3mラインでは塊状ハマサンゴの群落が観察された。しかしながら部分的に白化している群体や病気を持つ群体が確認された。同一調査地点にてカクレクマノミ、ハナビラクマノミ、ハマクマノミの3種が生息し、また、調査中には見られなかったものの歩くサンゴ(スイショウガイがキクメイシを体の上に乗せて歩く)が発見された海域でもあり、多様性の豊かな海域である。

10.東京都 三宅島・伊ヶ谷沖カタン崎  10/1(土)
 7月の富賀浜に続き、日本海水魚保護ネットワークが主催。TLは山本英生氏(日本海水魚保護ネットワーク)、TSは鈴木倫太郎氏(駒沢大学応用地理研究所)がつとめた。参加者は6名、うちCNからは1名だった。1999年以前には50%を超えていたHC比率が今回は33.8%にまで落ち込んでいた。HCと石灰藻が同程度の比率で確認されたので新規加入のサンゴへ影響を与えている可能性がある。サンゴの種類自体は多く非常に健全であると思われる。TV朝日のクルー4名が同乗して実施され、その様子は10月9日のANNスーパーJチャンネルの1コーナーで放送された。

11.静岡県 西伊豆 田子・白崎  10/2(日)
 CNが主催し、シーランドダイビングサービスが協力。TSは小松恒久氏(越前松島水族館)、TLは宮本育昌(CN)がつとめた。一般参加者6名、CNから4名が参加した。ダイビングサービスからも3名の参加があったので計14名で実施した。ガンガゼの生息数が前年までの調査の半分ほどとなりサンゴとの関係が興味深い。HC比率が年々少しずつではあるが下がる傾向にあり、また今年はチョウチョウウオの生息数が前年の合計75匹から23匹へと3分の1以下に減少しているので今後の長期観測が必要である。

12.東京都 小笠原 父島・屏風谷  10/9(日)
 CNが主催し、KAIZINが後援。ガンガゼとパイプウニの生息数が増加した。サンゴの状況には特に変化はなく、ウニ類は海況によってこわれたサンゴ破片についているように思われる。HC率は80%と非常に良好な状態を保っている。調査地点の近くにいけすがあることが原因なのか、調査対象にするかどうか迷う程度のサイズのハタが多く見られた。

13.沖縄県 沖縄本島・泡瀬干潟  10/22(土)
 泡瀬干潟を守る連絡会、ジュゴンネットワーク沖縄、CNか主催し、ダイビングショップマリンガールが後援。TLは譜久里茂氏(ジュゴンネットワーク沖縄)、TSは安部真理子(CN)がつとめた。埋め立て計画がある泡瀬干潟において、泡瀬干潟を守る連絡会からの要請により今年よりRCを行うこととなった。沖縄本島周辺域最大のミドリイシ群落が観察され、ミドリイシと海草が共生しているという珍しい光景も見られた。

14.沖縄県 黒島・阿名泊沖  11/4(金)- 5(土)
 CNが主催。TSは豊島淳子氏(環境省、CN)、TLは渡辺敬久(CN)がつとめた。一般参加者5名、CN2名で行った。夏の台風シーズンの直後であり、また特に今年は八重山を直撃した台風によるサンゴの破損などの被害が大きかったため、HC比率には大きな影響が見られた。HC比率が、昨年は両ラインとも50%以上あったのに対し、今回はどちらも25%前後と、かなりの低下が見られた。魚類、無脊椎生物の生息数はどちらも非常に少ないが、これは漁業の影響と考えられる。今後の調査を通じてサンゴの回復状況に注意していきたい。

15.愛媛県 愛南町 西海  11/6(日)
 石原スポーツクラブが主催。中びしゃごと横島2号の2箇所で実施した。TLは町田邦彦氏(石原スポーツクラブ)、TSは西尾 知照氏(環境省自然公園指導員)がつとめた。合計11名の参加があった。中びしゃご(3mライン)に関しては台風による新たな影響はなかったものの、昨年の台風により壊れたサンゴがそのまま礫や岩となって残っているのが観察された。HC比率が昨年に比べて低下していた。シロレイシガイダマシの食害も、1箇所観察されたので今後の注意が必要である。横島海域周辺(10mライン)は徐々にソフトコーラルが復帰しつつある様子で健全であると思われる。
16.東京都 八丈島・八重根  11/9(水)
 CNが主催し、レグルスダイビングが協力。TL,TSは宮本育昌(CN)がつとめた。八丈島周辺では2002年からRCを行っているが、本ポイントでの調査は2003年に続いて2回目である。HC比率は変化しておらず良好な状態が保たれていた。しかしながら、調査範囲外にまとまって白化している場所があり、これは調査日の少し前に発生した土砂流入が原因だと推測される。ガンガゼ類の数が大幅に減っており、ダイバーの餌付け、釣り餌用の捕獲、などの影響が懸念される。

17.鹿児島県 奄美大島南部・安脚場沖  11/9(水)
 瀬戸内町「海を守る会」 が主催。TSは興克樹氏(奄美海洋展示館調査員)、TLは太田健二郎氏がつとめた。参加者は18名(内訳:海を守る会16名、CN1名)。当調査ポイントでのRCは、5年連続5回目の実施である。
 2001年以降、奄美大島南部では、オニヒトデの大量発生により、サンゴ礁は壊滅状態となっているが、当調査地を含む周辺海域は、生サンゴ被度も高くサンゴ重点保護海域に設定され、行政および「海を守る会」のボランティアによる集中的なオニヒトデ駆除が行われている。調査の結果、HC比率は昨年より減少していた。5mラインではHC比率は21.9%であるものの、オニヒトデの食痕や台風で折れた樹枝状ミドリイシ類の破片が目立ち、サンゴの健康度は良好とは言い難い。10mラインでは1年間で約40%のサンゴが死滅したと思われる。5m地点と同じように、オニヒトデの食痕や台風で折れた樹枝状ミドリイシ類の破片が目立った。残されたミドリイシ群落を保全するため、集中的なオニヒトデ駆除を継続しつつ、赤土流出等、周辺環境にも気を配る必要がある。

18.沖縄県 久米島・アーラ沖  11/12(土)
 ダイブエスティバンとCNが共催。TSは中谷誠治氏(亜熱帯総合研究所)と安部真理子(CN)が、TLは高橋達也氏(エスティバン)がつとめた。参加者計4名。
 久米島周辺でのRCは今年で7年目になるが、今回は天候の都合により予定の場所に行けず、過去2回RCを実施したアーラ沖で行った。HC比率はあまり高くなかったが、3mラインでは直径20-30cmほどのテーブル状ミドリイシが数多くみられた。今後の回復が期待される。

19.鹿児島県 与論島・供利  11/19(土)
 与論島ダイビング事業組合が主催。TSは入川暁之氏(琉球大学大学院)、野島哲氏(九州大学)がつとめた。地元のダイバーを中心に18名(島外ボランティアダイバー5名 TS 2名 島内ダイバー11名)の参加があった。HC比率は、浅場・深場とも最近1年間で大きな変化が見られなかった。食害やサンゴの病気は見られなかったし、富栄養化の原因となるような種類の海藻は見られなかった。チョウチョウウオ類の生息数は多い状態で維持、ブダイ類にはやや増加の傾向が見られたので、緩やかな回復傾向にあるのかもしれない。幼サンゴの数も少しずつ見られるようになってきている。ウニ類には増加傾向が見られた。
 前回同様『ウルプロジェクト』の一環として行われた今回のリーフチェックの大きな成果の1つとして、野島・入川両TSの協力により、『ヨロンの美しい海を取り戻すために』と題した講演会を与論高校の250名の生徒を対象に行い、与論島の将来を担う世代に、自分が生まれ育った島の海が今どのような状態にあるのか? 今後この海を守っていくには、どのようなことを考えなくてはいけないか? という話を聞いてもらうことができた。この講演会がきっかけとなり、受講した高校生が後日ビーチクリーンアップを行うこととなった。リーフチェック当日にも、島内ボランティアによるビーチクリーンアップが行われている。
竹内潜水堂のHPでの報告
 http://www2.odn.ne.jp/t-sensuido/reefcheck2005part2.html

20.沖縄県 西表島・鹿川湾中の瀬  11/19(土)
 ダイブサイト・ノグチとCNが共催。TLは野口定松氏(ダイブサイト・ノグチ)、TSは吉田稔氏(海遊)がつとめた。CNからは2名、計10名の参加者で行った。7月の台風の影響は多少見られたが、目視による被度50-60%(6mライン)、60-70%(10mライン)、RCデータのHC率は2年前の1.5倍に増え、非常に健全な状態が保たれていた。
 本ポイントでのRCは開始され7年が経過した。RC開始前にも台風の影響によりサンゴ被度が減少する被害があり、この7年間で順調な回復が見られたが今年再び被害を受けた。このような、台風の影響を受けやすく定期的に環境が変化していく海域でRCにより毎年データを取ることはサンゴ礁の変遷、サンゴ類の動態を正確に知る上で大変有意義であると考えられる。今後の長期的観測が非常に重要である。

21.沖縄県 沖縄本島・大度海岸  12/3(土)
 CNが主催。TLは譜久里茂氏(ジュゴンネットワーク沖縄)がつとめ、TSは安部真理子(CN)がつとめた。参加者数の合計は7名。今回は月末に予定されている砂辺のダイビングサービスからRCの方法を習得する意向の元、2名の参加があった。CNからは2名の参加。昨年までの結果に比べ、サンゴは回復しており、テーブル状ミドリイシの目視被度が40-50%を超えるという回復率(2001年調査時の倍以上のHC比率)であった。今後の回復が楽しみである。

22.沖縄県 西表島・外離島南  12/6(月)
 ダイビングチームうなりざきが主催。TLは関仁美(CN)、TSは伊谷玄氏(西表エコツーリズム協会)がつとめ、計11名で実施した。台風で倒されているテーブルサンゴが観測されたものの、全体的には右肩上がりに回復が見えてよい傾向である。

23.沖縄県 沖縄本島・砂辺No1  12/21(水)
 ブルートライとCNが共催。TLは山岸徹氏(ブルートライ)、TSは安部真理子(CN)がつとめた。砂辺の3つのダイビングサービスであるブルートライ、ブルーフィールド、アオカワから8名の参加があり、この10月に埋め立てが計画されている本海域のサンゴの現状を知るために実施された。5月の調査時と同様で本海域ではHC比率が非常に低く(3mライン10%、10mライン0.6%)、その分ソフトコーラルの比率が高い。ソフトコーラルとHCとの競争とも思われるので今後の継続観察が必要であるとともに、辺野古と同様、ライントランセクト調査では計測できないサンゴも生息しているので、方形枠調査を取り入れる予定である。
24.沖縄県 沖縄本島・砂辺 カリフォルニア  1/20(金)
25.沖縄県 沖縄本島・砂辺 遺跡  1/20(金)
 12月の調査時に参加した3つのダイビングサービスが「砂辺のサンゴを見守る会」を発足した。今回は同会が主催、TSは藤田喜久氏(琉球大学)がつとめた。12月のNo1ポイントに引き続き、カリフォルニアポイント、遺跡ポイントの2箇所での調査を実施。少々ばらつきがあるものの、HC比率はいずれも10%以下であり、非常に低い。3つのどのポイントもシャコガイの数が(3-17匹)多いが、チョウチョウウオの数とブダイの数が少ない(チョウチョウウオは砂辺では3-10匹が記録されたが、石垣島等では同じ調査区間内で20匹以上の記録がある)。今後の継続観察が大切である。方形枠調査に関しては砂辺のサンゴを見守る会でマイコドラ活動として実施を開始した。
26.沖縄県 石垣島・桜口  3/5(土)
 CNが主催し、BSAC JAPANが協賛、フジマリンサービスが協力。TSは吉田稔氏(海遊)、TLは宮本育昌(CN)がつとめた。参加者は一般4名を含む計11名。本ポイントでの調査は今回が4回目である。
 5mラインでは、直径40p程度の卓状ミドリイシ類が優勢して、直径5〜10p大の新規加入のミドリイシ類も比較的多く見られた。サンゴに関しては、ライン全体の目視による被度が30〜40%と昨年と比べ大きく低下しており、今回のHC比率も15%程度低下している。昨年まではミドリイシ類が順調に生長し極相の状態になってきたと思われたが、オニヒトデの食害により死亡サンゴが目立ち被度も低下し、台風によりサンゴ類が折れて景観がみだれていた。直径5〜10pの小さなオニヒトデの食痕がライン周辺に20〜30箇所見られ、オニヒトデに関しては増加傾向にあると思われる。サンゴ類の病気や白化現象は見られなかった。9mラインでも直径30〜40pの卓状ミドリイシ類が優勢し、多様なサンゴ相が見られた。ライン全体の目視によるサンゴ被度は30〜40%RCのHC比率は2%程度低下した。 オニヒトデに関しては昨年と比較して食痕の箇所数が異常に多い。
 このポイントはオニヒトデ駆除が定期的に実施され、利用頻度の高いダイビングポイントであるため保全対策が他よりも行き届いているにもかかわらず、被度が落ちて死亡サンゴが目立つようになってきた。人間による対策ではなかなか効果が出ない現状が出ている。今回のRCで見られた食痕はすべて直径10〜20pの小さいものであり昼間目に付かない小型のオニヒトデが多く生息しているようである。そのため来年のRCではオニヒトデの食害を受け被度、景観ともに悪化していく可能性も否めない。対策の効果は出ずとも諦めず今後さらなる監視、駆除を行い地道な活動を続ける必要がある。

27.沖縄県 宮古島・八重干瀬  3/5(土)
 地元の市民サークル「宮古島サンゴ礁ガイドの仲間たち」、ダイビングクラブ・ブルーフォレストとCNが共催。TSは梶原健次氏(宮古市職員) が、TLは平本明彦氏(ブルーフォレスト)がつとめた。沖縄県宮古島北東部に広がる一大サンゴ礁群・八重干瀬(やびじ)で実施。大小100を越えるリーフがあると言われるこの海域は、古くから漁業に利用され地元の人々に親しまれてきた。毎年春の大潮には普段水面下に没しているサンゴ礁が浮かび上がることから、「幻の大陸」と呼ばれ、多くの観光客を集めている。「宮古島サンゴ礁ガイドの仲間たち」の3名、地元ダイバー5名、CNから1名の計6名で実施。HC比率は3mラインで25.6%、10mラインで34.4%と前年までとあまり変化のない様子ではあるが、オニヒトデが見られたこと、また、同じくサンゴを食害する巻き貝シロレイシガイダマシも見つかったことなどから、今後も注意深く見守っていくことが必要である。

【その他の活動(セミナー、展示会等)】

【リーフチェック活動】についてはこちらから
1.コーラル・ネットワーク(CN) 総会 
 4/2に東京ウィメンズプラザにて総会を実施。8名の運営部員が参加。各担当リーフチェック(RC)の実施状況の報告、会計報告、第10回国際サンゴ礁シンポジウム関連の報告(ブース展示、発表、RCミーティング、ワークショップ)、第7回日本サンゴ礁学会大会での発表、セミナー、などの年間の活動全体について報告、意見交換を行った。

2.NPO法人沖縄観光産業研究会 定例勉強会
 5/19(水)に汐留納村での「チーム美らサンゴ」(ANA、沖縄電力など9社が作っているチーム)が行っている「サンゴ植え付け」の事業を取りまとめている団体。

3.琉球大学大学院にて講義
 琉球大学大学院修士課程の留学生対象のコース’Coral Reef Biology’の授業の一環としてリーフチェックを取り上げ講義を行った(英語)。6/20(月)同大学理学部にて。海洋生物学科の学生対象の授業の一環であるので、調査方法や現在までのデータを紹介した。また、留学生の現在の居住地での問題である沖縄本島の基地問題を紹介し、1998年より継続してRCを行っている辺野古のデータを中心に取り上げた。バングラディッシュやインドネシアからの留学生8名が出席。

4.オリンパスにてセミナーを実施
 6月の環境月間に合わせて社内行事の一環として、6/22(水)八王子・石川事業場にて、24日(金)新宿・モリノス本社にて「リーフチェック報告会」を実施。RCの結果や進め方について解説、RCへのボランティア参加要請を行った。参加者は2回合わせて30名弱で24日の懇親会にはCNより2名参加した。

5.さがみはら環境まつりに出展 
 6/5(日)に麻布大学にて開催されたさがみはら環境まつりに出展。本イベントは地域で活動する市民、事業者及び行政のパートナーシップにより「さがみはら環境まつり」を環境の日に開催し、広く市民、事業者に環境への身近な取り組みの大切さなど環境保全意識の向上を図るものである(主催、相模原市。共催、麻布大学) 。CN作成のサンゴに関する子供向けのクイズが好評だった。

6.足立区NPO活動支援センター 講座「NPO活動体験教室」
 7/23(土)に足立区生物園にて、子供たち(約40名)を相手にサンゴ礁に関するクイズや簡易リーフチェック陸上訓練デモなどを実施。質問が活発に出るなど手ごたえがあった。
 CNからは2名の参加。

7.海フェスタ沖縄に出展
 「美ら海 共生そして創造」をテーマに、7/20〜21、沖縄県立武道館で開催された「海フェスタおきなわ-海の総合展」にブースを出展。海の近さを活かして、子供たちに見てさわってもらえるよう生きたサンゴやサンゴ礁の生きものたちをタッチプールとして展示。また、ジュゴンネットワーク沖縄と泡瀬干潟を守る連絡会提供の写真やビデオをブース内で放映し、CN作成のクイズも実施した。

8.第76回日本動物学会(つくば大会)による市民向け特別展示「動物学ひろば」参加


 日本動物学会では、一般市民 向け特別ポスター発表を「動物学ひろば」として開催している。これは動物学会会員の日頃の研究を市民の皆様にわかりやすく説明し,動物学の面白さを直接訴えかけることを目的とした企画である。今年は茨城県つくば市、つくばカピオにて10/8(土)、9日(日)開催され、今回はCN運営部員の安部が同学会学会員であることをきっかけに、CNからもブース展示を行った。RC紹介ポスターの展示、サンゴ骨格(実体顕微鏡観察試料)の展示、クイズを実施。
9.EverBlueビーチクリーンアップ参加 
 「海と自然環境を考えるフリーマガジン「EVERBLUE」(http://www.everblue-mag.com)」 が主催するビーチクリーンアップ(9/11)に参加。同団体からは2003年よりグッズ売り上げの一部を寄付いただいている。CNからは、5人参加し、RCに関し説明し、パンフレットも設置・配布。

10.沖縄本島名護市にて講演会、「トンガ王国・サンゴの海から見えてくるもの」
 9/22に辺野古RC(9/23実施)の事前ミーティングの一環として亜熱帯総合研究所の中谷誠治さんを招待。中谷さんがJICA(国際協力機構)の専門家としてトンガに2年間赴任されていたときのご経験や沖縄のサンゴ礁の現状に関し紹介いただいた。CN運営部員、一般参加者とジュゴンネットワーク沖縄のメンバー計15名が参加した。

11.BSAC JAPANエリアミーティング参加報告 
 BSAC(The British Sub-Aqua Club) JAPANのエリアミーティングに参加。BSAC JAPANが経営的に独立し、生まれ変わることに併せ、海の環境保護を訴える「ブルーリボンマグネット」を会員向けに販売し、その売り上げの一部をCNに寄付する、という企画が実現、その寄付の目録授与式(108,000円)が、10/19に英国大使館で開催された「BSAC JAPAN AREAMeeting 東京」の中で行われました。CNから2名参加し活動を紹介した。BSAC本部理事に、「Coral Reefs of Japan」「Reef Check Monitoring Training Workshop」を提出し、RCがサンゴ礁保全に役立っていることを説明した。この授与式は、月刊ダイバー12月号(11/10発売)のDIVER's NETの欄にて紹介された。

12.第8回JCRS(日本サンゴ礁学会)参加
 11/25-28に琉球大学西原キャンパスで行われた日本サンゴ礁学会第8回大会にて、「リーフチェック(RC)の結果から見た紀伊半島のサンゴ群集のダメージ」と題したポスター発表と、各地のRCの紹介と現在までの各地のデータを紹介するブース展示を実施。CNからは4名参加。あわせて、大会会期前後に行われたJCRS評議会とその関連委員会に、運営部員の安部がCNを代表して出席した。

13.和歌山県串本の調査海域にマーカーを設置
 12/17にRC串本の調査海域マーカー設置を行い、その様子をRC串本HPに掲載した。その様子はこのURLで紹介している。
 http://comet.plala.jp/kushimoto/

14.ふちのべ塾
 12/22に麻布大学で開催された「第27回ふちのべ塾」において、「サンゴ礁の健康診断(リーフチェック)から分かってきたこと」と題してセミナーを実施。13名の参加があった。

15.ダイビングフェスティバル 
 2/3-5に東京ビッグサイトで開催されたダイビング関係の展示会[ダイビングフェスティバル2006]において、RCのPRを実施。例年通り今年もWWF-Japanブースの一部を借りた。ブックレット、RC 5年次レポート、リーフレット、日本のサンゴ礁を展示し、CNの活動を紹介した。

16.海辺の環境教育フォーラム参加
 3/3-5に沖縄本島残波で開催された第6回海辺の環境教育フォーラムに「リーフチェック・トレーニング・ワークショップについて」と題したポスター発表を行った。CNより2名参加。

17.モニタリング報告会
 3/4に環境省(モニタリングセンター)主催で石垣島・サンゴ礁モニタリングセンタにて開催。約15名の参加があった。CNからの参加は2名。マスコミ取材が2件あり、翌日のNHKニュース、八重山毎日新聞で報道された。報告はCNから八重山のRC結果について、吉田氏から環境省のモニタリングサイト1000事業の調査結果について行われた。

18.石西礁湖自然再生協議会に登録
 環境省、沖縄総合事務局、沖縄県の3者で呼びかけにより、2006年2月に発足した石西礁湖自然再生協議会に、コーラル・ネットワークとして団体で登録した。

19.記事の執筆など
・環境省サンゴ礁モニタリングセンターのニュースレター「Lagoon」に「八重山海域のリーフチェック」と題し執筆。
・EverBlueにCN活動の紹介記事を執筆した。