資料のページ【5】

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<お願い>
何よりもまず、リーフチェックの資料を熟読して下さい。背景を知らないと理解が中途半端になってしまいます。このマニュアルはその手助けのために作られています。また、マニュアルは刻々と変化します。最新の物を読んで下さい。

 
以下の資料がひとつのファイルになっています。
L11  Reef Checkに関して
【リーフチェックとは?】
【なぜリーフチェックなのか】
【サンゴ、サンゴ礁とは何か?】
【リーフチェック・プログラムの目標】
【アプローチ】
【1998年第一次調査結果】
【サンゴの白化と死滅】
【乱獲の結果】
【乱獲の解決策】
【世界的なサンゴ白化と死滅現象】
【白化の解決策】
1.Reef Check について
2.リーフチェックの詳細

 
 
 
 L11 Reef Checkに関して
 
【リーフチェックとは?】
 私達コーラル・ネットワークは、海の定点観測の実施・普及・支援活動を通して、珊瑚礁を中心とした海の自然環境保護に寄与することを目的とするNGOです。
 その活動の一つにサンゴ礁保全にかかわる「リーフチェック」があります。
 リーフチェックは、レジャーダイバーと海洋科学者による、グローバルな世界最大のサンゴ礁保全プログラムです。1997年にリーフチェックチームは、初めて地球規模でのサンゴ礁調査を行いました。750人以上のボランティア・レジャーダイバーが訓練を受け、100人ものボランティア科学者による指導のもと、31カ国において300ケ所以上のサンゴ礁調査が行われました。
 リーフチェック1997の結果、サンゴ礁は地球規模でダメージを受けている、確かな証拠が初めて見つかりました。リーフチェック1998では40カ国をカバーして、空前の地球規模サンゴ礁白化をドキュメント化しました。価値ある科学的結果を生み出し、サンゴ礁の価値や生態系への脅威とその解決法について、科学者、政府、政治家、社会に向けてサンゴ礁に対する意識を高めました。
 このメッセージはCNNやBBCなどのテレビを通して世界中に伝えられ、多くの言語でメジャーな新聞や雑誌に取り上げられました。多くの支持により、今後リーフチェックは毎年行われるでしょう。参加する人や国が多いほどメディアは大きく取り上げ、問題解決の対策もより早く取られるでしょう。
 リーフチェックは、国連の世界サンゴ礁モニタリング・ネットワーク「地域社会に根ざした」調査プログラムに選ばれました。地域の人々が彼等のサンゴ礁を監視する
方法を手助けし、サンゴ礁が持続可能な方法で管理されるように、必要な情報を提供する数少ないプログラムです。リーフチェックに参加することは、人々の姿勢を変えサンゴ礁が回復できる、ダメージ進行を和らげる最も良い方法です。リーフチェックは、サンゴ礁の危機に対する一つの解決策なのです。
・なぜサンゴ礁を心配するのか?
サンゴ礁は、熱帯の海域およそ100カ国に渡って見られる。それは、何百万という人々に社会経済学的な恩恵を与える貴重な天然資源なのである。サンゴ礁は生態学的に重要な生態系であり、豊かな遺伝資源貯蔵庫の役割を果たしており、生物多様性が高い。食料や医薬品の源でもあり、海岸を波の浸食から守ってくれる。多くの熱帯の島々や、観光業にとって非常に重要な白い砂浜のほとんどは、サンゴ礁の副産物である。サンゴ礁の美しさを求め、世界700万人のスキューバダイバーは、はるかな目的地へ何千マイルもの旅をするのである。

【なぜリーフチェックなのか】
 1997年に先立ち、サンゴ礁の劣化について多くの報道がなされたが、それは“世界のサンゴ礁の健康状態はどうか?”という問いに答えられるものではなかった。サンゴ礁に時間を割ける科学者があまりにも少なく、調査場所も少なすぎ、長期に渡る研究も殆ど無かったため、標準的な科学的プロセスでは答えを出せなかった。多くの研究では、基本的な調査に重点を置き、似通った測定法を採ることはほとんど無いのである。
 1997年、the HKUST Institute for Environment and Sustainable Developmentが初めてサンゴ礁の世界的調査を行った。その調査は今まで行われたものより遥かに大規模で、調査場所間で比較できるよう、全ての調査場所で同一の測定法に基づいて行われた。その結果、世界の異なった地域のサンゴ礁にも似たような問題があることが確認された。魚介類の乱獲は予想を遥かに上回り、遠隔の地域に於いては特にひどいことが分かった。

【サンゴ、サンゴ礁とは何か?】 
 サンゴは動物であると同時に、その組織の中に生息する微小な単細胞植物と共生している。他の動物同様、サンゴポリープは食糧を捕獲して食べるが、その植物細胞はサンゴに付加的な栄養化合物源を供給する。これらの褐虫藻のために、殆どのサンゴは特有の茶色がかった緑色をしている。褐虫藻からの特別なエネルギーによって、サンゴは石灰質の骨格を隠すことができるのである。多くの生きているサンゴとサンゴ死骸が長い時間をかけて融合すると、サンゴ礁が形成される。サンゴ礁は、有機体によって作られた最大の体系なのである。

【リーフチェック・プログラムの目標】
1.科学:“サンゴ礁の健康状態は世界的にどうであるか?”という問いに十分答えられるよう、サンゴ礁に対する人間活動の影響の総観的評価を行うこと。
2.沿岸管理:サンゴ礁の価値、サンゴ礁の健康への脅威、そういった問題の解決策に関する一般の人々の意識を高め、サンゴ礁の保全および管理に貢献するチームの世界的ネットワークを確立すること。

【アプローチ】
 このボランテイア・プログラムは、HKUST を基点としてインターネットで運営されており、詳細は、我々のウエブサイトhttp://www.ReefCheck.org/ に掲載されている。各国および地域のコーデイネーターは、チームを組織する責任を負っている。香港では、今年の地域コーデイネーターは WWF である。各チームには、経験豊かなレジャーダイバーのグループが配属される。彼らは調査測定法のトレーニングを受け、調査の品質管理に責任を担うプロの海洋生物学者(60%は博士号保持者)の指示のもと調査を行う。調査は、1998年4月1日から9月30日の間に行われた。トレーニングが迅速に行われ、生物同定が正確にできる様、調査測定法はレジャーダイバーのため特別に考案された。ハタ類のような主要“指標”生物は、シアン化合物を使った漁の影響を見るのに使われ、チョウチョウウオ類は観賞魚貿易の影響を示している。イセエビなどの世界共通の指標生物もあれば、ナポレオンフィッシュ(インド太平洋海域)のように地域的な指標生物もある。

【1998年第一次調査結果】
 1997年を上回り、35カ所以上の国・地域からの報告が予想される。何百人ものダイバーと百人を超える海洋生物学者が、ボランテイアで時間と労力を費やし、調査を行った。リーフチェックへの支援は、科学者、政府、ダイビングクラブ、環境保護団体、観光業界の間で高まってきている。
   1998年の調査結果は、1997年の結果を再確認するものとなった。ほとんどのサンゴ礁では乱獲の影響が著しく、高価な生物はほとんど姿を消してしまってい
るのである。世界指標生物の内、イセエビはかつては数多く生息していたものの、85パーセントの調査地で記録されず、“空の”サンゴ礁が4パーセント増加した。6
3パーセントの調査地でハタ類が観測されず、これは1997年と比べ16パーセントの増加である。約20匹のハタ類が、海中公園内にある数カ所のサンゴ礁で記録された。他の世界指標生物も、同様の傾向を示していた。インド太平洋海域の指標生物のうち、90パーセントの調査地でナポレオンフィッシュが記録されなかった。また62パーセントの調査地で食用ナマコが記録されず、これは1997年に比べ23パーセントの増加である。シャコ貝類は調査地の53パーセントで全く観測されず、これも前年比30パーセント増であった。
   サンゴ礁域のサンゴ自体は、生きているサンゴの被覆度が10パーセント以上減少しており、サンゴ死骸の被覆度が高くなっている。この変化の主要因は、サンゴ礁域の多くのサンゴやそこに生息する生物を死滅させた先例のない“白化”現象であり、インド太平洋海域が最も大きな被害を受けた。

【サンゴの白化と死滅】
 サンゴが高温、紫外線、あるいは他の環境変化によってストレスを受けると、共生している褐虫藻を放出し白くなる(白い骨格が透明な組織を通して見える)。ストレスの程度やその継続期間によって、サンゴは回復したり死滅したりする。1998年はエルニーニョの年であり、初めて観測記録がなされた1860年以来、最高温度を記録した。1998年1月から9月までのSST衛星(SST:sea surface temperature海水面温度)による観測記録地図(米国海洋大気局 Alan Strong博士提供)は、海水温が通常の季節最高温度を少なくとも1度は上回っている海域を示している(黄色とオレンジ色の部分)。SST衛星のデータを使って、Strong博士は、このような地域に白化が起こり得ることを予測できたのである。多くのリーフチェック調査は海水温が局地的に上がる前に行われたにもかかわらず、インド洋や南ベトナムに於ける高い死滅率と共に、30パーセントの調査地である程度の白化が報告された。国際サンゴ礁研究学会(the International Society for ReefStudies)は、“現在の白化現象というのは、多くのサンゴが完全に白化し、引き続いて死滅するという非常に深刻なものである。”と述べている。グレートバリアリーフ海中公園局(The Great Barrier Reef Marine Park Authority)は、グレートバリアリーフの沿岸域にある程度ダメージを受けていると報告している。千年も生きてきたサンゴが、世界の数カ所で死滅してしまったのである。

【乱獲の結果】
1.毒物やダイナマイトなどを使った、しばしば違法な漁法による高価海産物の乱獲は、1998年には悪化した。昨年と比べ、今年は生物が全く観測されない“空のサ
ンゴ礁”がかなり増えている。

2.都市から遠く離れたサンゴ礁も、遠方からやって来る漁業者のため、都市に近いサンゴ礁同様、ひどい状態にある。プラタス・リーフ(Pratas Reef)(Dongsha)礁池
は、台湾、中国、香港からやって来た、何百隻もの漁船によるダイナマイト漁や毒物漁法により、1998年壊滅的なダメージを受けた。

3.海産物は、我々皆が手頃な値段で享受できるはずの再生可能な資源である。しかしながら、サンゴ礁に生息する魚類や貝類の需要は、自然の供給量を上回った。漁業者の数が多すぎ、魚介類が不足している状態なのである。

【乱獲の解決策】
a.海中公園が周辺海域の生物種回復源としての機能を果たすためには、漁業禁止のより大きい海中公園がさらに必要である。プラタス・リーフ(Dongsha) は恐らく、国際的海中公園の良いモデルになるであろう。
b.サンゴ礁に於ける漁の暫定的禁止は、あまり効果が見られない。香港、台湾、中国は、領海内で禁止されている毒物を使った漁やダイナマイト漁などを、領海外で行うことを厳しく禁ずるべきである。
c.香港は、生きた海産物の主要インポーターである。政府は、最新探知システムをもってシアン化合物の残留を調べるテストプログラムを確立し、シアン化合物を用いて漁獲された魚の輸入者を処罰するべきである。
d.全ての国は、産卵したことのない幼生の魚介類の輸出入を禁止すべきである。

【世界的なサンゴ白化と死滅現象】
1.世界的なサンゴの白化現象と死滅は、地理的範囲やその影響が報告された水深、及び影響の深刻さに於いて史上先例のないものである。
2.この現象による経済的影響は現在も尚進行中であるが、観光業や海産物の値段、またこの様なことが起こった前例がないため思いもよらない分野で、長年に渡り続くであろう。
3.1998年は、記録に残る最高に暑い年であった。気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)(科学者2,500人)は、地球
規模の変化は既に計測可能であるという結論を出した。過去7年間に渡って明らかに上昇傾向があるが、年々の温度の自然変動とエルニーニョが、今年サンゴの限界を越える所まで水温を押し上げたのかもしれない。今月イギリスの Hadley気候センターから出された最新の気候モデルは、50年以内に海水温は2度上昇すると予測している。したがって、今年起こった現象が地球温暖化によるものであるないにかかわらず、サンゴ礁生態系の未来は、地球温暖化が逆行しない限り脅かされるのである。

【白化の解決策】
a.地球温暖化およびサンゴ礁へのダメージは、防ぐことができるものである。我々一人一人が、電気や自動車をより効率良く使い、エネルギーを節約し、地球温暖化を抑えるために多くの事ができる。
b.温室効果ガスの二大産出国であるアメリカ合衆国と中国は、京都会議で合意された5−7パーセントを遥かに上回るガス産出量の減少を目指すべきである。
c.現存する発電所を改善し、将来はより効率的なものを作る必要がある。
d.自動車の燃費は、法律によって50マイル/ガロンに増加させるべきである。
e.樹齢の高い森林の伐採を禁止し、新たに植林すべきである。
f.欧州連合(EU)、発展途上国、アメリカ合衆国は、京都会議での合意事項実施を避けるための排出権の売買など、“可撓システム”を用いるべきではない。

1.Reef Check について
 リーフチェック調査は、1月1日から12月31日まで世界各地で行われます。海の科学者とレジャーダイバーの誰もが確実に責任分担し、科学的に質の高い調査を実行します。

2.リーフチェックの詳細
2-1)論理的根拠
 ダーウィンの時代から、科学者はサンゴ礁を監視し続けています。1993年のグァム国際サンゴ礁学会では、世界最高のサンゴ礁学者の多くが一同に会して、世界のサンゴ礁の 現状について議論しました。会議の終わりに下された結論は、人口が集中している場所 の近くのサンゴ礁のいくつかは被害をうけつつあり完全に破壊されたものもあるが、 人口の集中した場所から遠く離れたサンゴ礁の被害は比較的軽いというものに過ぎませんでした。つまり世界のサンゴ礁の健康状態に関する明白な合意は得られなかったのです。
 サンゴ礁学者のなかには、科学者が使ってきた標準的な測定法のいくつかにも問題があると感じる人達がいました。これらの詳しい測定法は社会生態学を研究するために考案されたもので、測定されるパラメーターの中には、サンゴ礁の健康が損なわれたときに影響を受けないかもしれないものも数多く含まれています。彼等は人間がサンゴ礁に及ぼす影響を調べるための特別な測定法を考案すべきだと感じていました。その影響こそ人間が防ぐことのできるものだからです。

従来の科学的研究の持つ深刻な問題として、サンゴ礁学者の数が少なく、彼等の多くが他にも仕事をかかえているため、たまにしか調査が実行できないことも分かりました。ですからサンゴ礁の健康状態をチェックするデータは所々にしかなく、データどうしの比較も容易ではありません。これを解決するには、毎年短期間だけ行う世界的な調査チーム(科学者でないボランティアの協力による世界のサンゴ礁の健康状態の大まかな調査)を組織することでしょう。この考えは1996年のはじめに構想され、GregorHodgsonとShaun Waddellによって1996年7月22日に「リーフチェック」と名付けられました。

2-2)目的
 1)サンゴ礁の価値を知り、保護すること。
 2)そのために必要な環境についての社会的アピール。
人の生活による影響を確認することは、世界中のサンゴ礁環境に強い影響を与えます。  

2-3)組織
 リーフチェックは、IYORコミッティー・メンバー、および経験あるリーフ科学者によってデザインされてスタートする国際的な催しです。世界中の科学者やダイバーの支
援により、私達はいくつかの国内および地域調整者の中で、リーフチェックに対する責任を分割しました。もしあなたが、私達の国内あるいは地域調整者の近所にいれば、登録してトレーニング、資金調達、場所選択、および他の詳細について、彼らと行動して下さい。もしあなたが、国内あるいは地域調整者の近くでなければ統括本部に直接に登録して下さい。

2-4)調査方式
 リーフチェック・調査方式が、コミッティーによって、科学的なサンゴ礁調査として認められました。環境の影響を調査するリーフチェック・プロジェクトは、限定して
集約するための単純化があります。
 すべてのリーフチェック・グループは調査方式の完遂を目標にしますが、希望する追加調査を加えて実行することもできます。もし結果がリーフチェックのテーマに適切なら、それは採用されるか追加してレポートに反映されるかもしれません。

2-5)データ処理
 それぞれのダイバー・グループは、データ処理エラーが伴うので、カウント集計のプログラム手続きは、シンプルにしました。そして集計のため最後に地域センターに提出されます。世界中のリーフ環境をレポートすることは人々に強い影響を与えます。データは科学的意味を持って活用され、より多くの細目で利用可能になるでしょう。

2-6)チームメンバーの構成
 それぞれのリーフチェック・グループは、調査を実行するために、列挙したデータ形式の識別訓練が可能なダイバー・グループと1人の有資格サンゴ礁科学者から構成されます。
 高校生でも参加できるように、調査方法は、できるだけシンプルにデザインされています 。
 実用的なグループ・サイズは、4組(8人)のダイバーでしょう。しかし、これより多くても少なくても適応できます。
 1)サンゴ礁の価値を知り、保護すること。
 2)そのために必要な環境についての社会的アピール。
人の生活による影響を確認することは、世界中のサンゴ礁環境に強い影響を与えます。