REEF CHECK マニュアル 【一般ボランティアダイバー用】

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

Reefcheck manual [2007年版 Ver. V-1.0]

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

INDEX   

【リーフチェックってなに?】 【リーフチェックの目的は?】
【どうやって対象種を選んだの?】 【なぜサンゴ礁を心配するの?】
【調査方法は?】 【データをどうするの?】
【私は何をすればいいの?】 【水中用データシート】
【リーフチェックってなに?】
 リーフチェックは、人間にも多大な恩恵を与えてくれる自然界の源のひとつといえる サンゴ礁の状況を調査して、そのデータを世界中から集めて分析し、サンゴ礁の健全度やサンゴ礁の 健全度に影響を与える要因を探るための調査のひとつです。
しかし、ただそれだけであれば、海洋学に詳しい専門化がやれば良いだけの話のような気もしますが、
1)世界的にサンゴ礁学者は不足しており、学術的ななんらかの結論を得るには、 極めて多くの時間が必要になってしまう。

2)学術的な結論を待つだけではなく、今、サンゴ礁を保護していくということも平行して行わないと、 ただ現実に衰退しつつある自然をただ見ていくだけになってしまう。

3)そうならない為にも、多くの人にサンゴ礁の状況を知ってもらい、サンゴ礁保護への意識を高めてもらうことが必要。

というような背景で、サンゴ礁の保全を実現する為に、科学者でないボランティアの協力による 世界のサンゴ礁の健康状態の大まかな調査を組織するという考え方がホジソン博士という方を中心に構想され、 1996年に「リーフチェック」と名付けられました。
 一般のアマチュアダイバーにも参加して頂ける調査手法として考え出されたのがリーフチェックというわけです。 実際には、ボランティアダイバーによる調査の精度を高める手助けとして、1名以上の海洋科学者・専門家がチームに 加わることになっています。
【リーフチェックの目的は?】
以上のような背景に基づいて、リーフチェックの目的を考えると、
 1)サンゴ礁の価値を知り、保護すること。
 2)そのために必要な環境についての社会的アピール。
ということが言えるでしょう。 そのためにも、多くのアマチュアダイバーにとって、わかりやすく、 楽しみながら実施できる調査であることが、リーフチェックの最も根底にある大切なコンセプトだと 考えています。
【どうやって対象種を選んだの?】
 リーフチェックでは、海底のサンゴが生きているか死んでいるかといった底質調査の他に、 調査地にどのような生物がどのくらいいるかの調査も行います。
 調査対象生物は、さらに魚類と無脊椎動物の二つに分かれ、前述のリーフチェックの 基本コンセプトに従って、世界共通の標準調査対象種が決められています。
1)サンゴ礁の健全さの度合いと密接な関係にある生物を対象とする。 サンゴ礁健全度を表すバロメータとなるものと言ってよいと思います。 ここには、サンゴ礁の健全度と比例して増える生物だけではなく、サンゴにダメージを与える生き物も含まれます。
2)人為的な影響をみるひとつとして、食用や鑑賞の為に捕獲されている生物を対象とする。
3)一般のアマチュアダイバーにも容易に識別することができ、地域・季節などの違いによるバラツキが少なく、 比較的短時間で調査を終了できる生物を対象とする。

以上の3つに合致する対象を、さらに適当ないくつかの種に絞り込んで決められています。
 しかし、地域によっては、もともと存在していない、あるいは遥か以前から存在しなくなった種もあるかも知れません。 また、明らかに捕獲対象にはなっていないといものもあるでしょう。
 いないものはいない(カウントゼロ)としてRC本部に報告する必要はありますが、調査チームによっては、 調査地域でのオリジナルデータとしてそれを補完したり、参加者の楽しみを増したりすることを目的に、 調査対象種を追加しているところもあります。詳しい調査の対象については別資料にあります。
【なぜサンゴ礁を心配するの?】
 サンゴ礁は熱帯の海域およそ100カ国に渡って見られていて、何百万という人々に 恩恵を与える貴重な天然資源だからです。サンゴ礁は生物の多様性が高く、食料や医薬品の源でもあり、 海岸を波の浸食から守ってくれています。
【調査方法は?】
 海底に100mのラインを設置し、ライン上のサンゴの健康状態を観察したり、ラインの周辺にいる、 ハタの仲間やイセエビの仲間など決められた魚類や無脊椎動物などの数を数えます。
リーフチェックの調査法は、人的影響を見るという点に絞られていますからサンゴの成長形態を記録する 必要はありません。
【データをどうするの?】
 本部に集められ、様々な形で人的影響を受けている世界中のサンゴ礁の割合やサンゴ礁の状況のグローバルな 概要を発表しています。
【私は何をすればいいの?】

役割と適切な人数を割り当てます。人数が多い場合はより詳細に、人数が少ない場合は兼任で決定します。

チームリーダー 1人
チーム科学者 1人
リーダー補佐 1人 (必要に応じて)
1)調査測線設置・回収 1人以上
2)魚類調査 2人
3)無脊椎動物調査 2人
4)底質調査 2人
5)ビデオ 1人
6)写真 1人
7)安全確保要員 1人以上(兼任可能)
8)GPS記録 1人(兼任可能)
9)水中データ回収 1人(兼任可能)
10)アンカー打ち 1人(兼任可能)
11)データ整理 1人以上
12)本部への送付 1人

これらのうち、1)〜7)が水中での作業担当です。

通常リーダーが中心となって行なうもの・・・1,7,8,9,10,11,12
ボランティアが担当しやすいもの・・・2,3,4,5,6

・調査手順は?(調査手順チャート)
1.調査地点の決定
 チームリーダーが調査地点を決定します。毎年同じ位置での調査が要求されていますので、 調査海域を良く知っている人が行います。

2.調査測線の設置
 一回は水深3m(2〜6mの間なら可)、もう一回は水深10m(6〜12mの間なら可)に調査測線を設置します。 100mのメジャーがない場合には、50mメジャー二つ、又は20mメジャー四つを用意し、 100mの調査測線を一度に設置します。メジャーの設置には大体15〜30分かかります。

・メジャーの設置、位置計測、メジャーの回収
1)一回目の設置
 一人または複数の設置担当者が、用意したメジャーを持ち潜行します。 一回目の調査水深での始点を決定し、そこにメジャーの0mを合わせて固定します。 調査水深に沿ってメジャーを設置していきます。設置する水深は上記の範囲内であれば問題ありませんが、 毎年同じ地点を調査するために、始点となるべく同じ水深を保つのが好ましいです。 メジャーの紐がたるんだり、サンゴをひっぱって破壊しないように、二人組みで行うとなお良いです。
 また、必要に応じて、始終点へのブイの設置や、調査範囲である5m幅の目安を示すロープなども設置します。

2)位置計測
 メジャーの始点が決まったら、その位置をGPSで測定し、データシートに記録します。 メジャーの設置が終わるのを待ち、終点の位置をGPSで測定し、データシートに記録します。 調査終了後に測定しても構いません。調査終了後に測定する場合、ブイのみを残してメジャーは回収し、 船上からGPSを測定して船からブイを回収すると楽に行えます。
 なお、GPSとは経度・緯度を測定する機器です。

3)メジャーの回収
 すべての調査が終了し、データをチェックして再調査の必要が無いと判断したら、すべてのメジャーやブイなどを回収します。 メジャーの紐が引っかかっているサンゴを破損しないように、細心の注意を払って下さい。

4)二回目の設置
 一回目と水深を変え、同様の手順でメジャー等を設置します。 一回目に設置したラインになるべく平行になるように設置して下さい。
 何らかの理由で調査地点が変わる場合は平行にする必要はありませんが、 測線の始点と終点を再度GPSで測定して下さい。

5)メジャーの回収
 すべての調査が終了し、データをチェックして再調査の必要が無いと判断したら、すべてのメジャーを回収します。 メジャーの紐が引っかかっているサンゴを破損しないように、細心の注意を払って下さい。

3.魚類調査
 チョウチョウウオ類、コショウダイ類、、フエダイ類、サラサハタ、体長30cm以上のその他のハタ類、メガネモチノウオ、 カンムリブダイ、体長20cm以上のその他のブダイ、ウツボ類の個体数を調べます。 メジャーの設置終了後、魚類が調査測線付近に戻ってくるのを15分間待ってから、魚類の担当者のみがエントリーし、 調査を開始します。調査は1時間程度かけるつもりで行って下さい。
 調査は、メジャーの0〜20m、25〜45m、50m〜70m、75m〜95mの位置における、 メジャーを中心とした左右それぞれ2.5m(計5m)幅で、合計20m×5m×4=400平方mの範囲で行います。 高さは、幅5mの礁斜面から水面に向って真上に5mまでが調査範囲になります。
 この範囲内にいる指定魚種のそれぞれの個体数を数え、水中用データシートに「正」の字を書いて記録します。 (これをエリア限定調査と言います。)
30cm以上のハタ類については、サイズも記録してください。
 メジャーに沿って非常にゆっくり泳ぎながら、調査を行います。 岩やサンゴの下に隠れた指定魚種が出てくるのを待つため、5m進んだら1分間停止し、その後カウントします。 この時、サンゴに着底したり、中性浮力を保つために大きな動作をするのは好ましくありません。
 透明度が良い地域では、その先で見られた指定魚種がカウントしようとした時にはいないと言う事があります。 この場合は数に入れて下さい。
 調査を二人で行う場合は、メジャーの左右に平行に並ぶ事になっています。 しかしながら誤認、見落としを無くすため、手元が見える範囲に近づいて泳ぎ、指定魚種を見つけたら指差し 確認を行う方が良いです。
 同様に、オニイトマキエイ、サメ、亀といった珍しい生物が見られた場合も、コメント欄に稀な生物として記録します。

4.無脊椎動物調査
 オトヒメエビ、ガンガゼ類、パイプウニ 、シラヒゲウニ、ナマコ(バイカナマコ、シカクナマコ、アカミシキリの3種のみ)、 オニヒトデ、シャコガイ類、ホラガイ類、イセエビ類の個体数を数え、水中用データシートに「正」の字を書いて記録します。
 シャコガイ類については、サイズと種も記録してください。

 魚類担当がエントリーして10分後に、無脊椎動物の担当がエントリーします。調査は1時間程度必要です。
 調査は魚類と同じ範囲で行います。指定生物の内、イセエビやナマコなどの夜行性生物は、 サンゴや岩の隙間に隠れていることがありますので、注意してくまなく調査して下さい。水中ライトは必携です。
 魚類と同様に指差し確認を行うと、誤認、見落としが減ります。
なお、調査を行う際、魚類の調査班には近づかない(概ね10m以上離れる)ようにしてください。
5.底質調査
 無脊椎生物担当がエントリーして5分後に、底質の担当がエントリーします。調査は1時間程度必要です。
 調査は、メジャーの直下の底質を、指定区分に従って10種類に分類し、0.5m毎に水中用データシートに 略号を書いて記録します。メジャーの紐が水底から離れている場合も、直下のポイントを調査し、 水中用データシートに記録して下さい。
 指定区分は、ハードコーラル、ソフトコーラル、死後1年以内のサンゴ、富栄養化の指標となる海藻、海綿、 岩、転石、砂、沈泥(シルト)/クレー、その他です。
 サンゴ被害(アンカー、ダイナマイト、その他)、ゴミ(魚網、その他)、白化サンゴ(サンゴ面積%と地域面積%)、 サンゴ病気(型/%)、ハマサンゴコロニーも調査します。
無脊椎動物調査班には近づいても構いませんが、魚類調査班には近づかないようにしてください。

6.写真・ビデオ撮影
 専門の担当は、無脊椎動物担当がエントリーする時刻より後にエントリーし、撮影を行います。 魚類調査を行っている範囲には近づかないように気を付けて下さい。
 写真・ビデオを組み合わせて、調査測線場所、調査結果、新たな発見、について文書にまとめて下さい。 経年変化をみる上で非常に重要な情報となります。
1)写真撮影
 毎年の調査を同一地点で行うことが出来るように、水上、水中での目印、調査測線全体、その周辺、 について撮影します。最低でも12枚程度は必要です。
 また、調査範囲に特徴的な場所(サンゴの白化、病気など)があれば、詳細に撮影します。
さらに、参加者が実際に調査をしている風景なども撮影しておくと、マスコミへの対応や、本部への実施状況の報告、 リーフチェック終了後の参加者の楽しみなどに役立ちます。 これは、陸上での参加者の集合写真や事前ミーティングの様子などの撮影も含まれます。
2)ビデオ撮影
 メジャーに沿って、非常にゆっくり移動しながら、調査測線全体を撮影します。 メジャーの設置状態やその周辺を、出来るだけワイドな画角で撮影します。
 撮影の基本として、場所の位置関係を明確にするため、メジャーの始点から終点に向かって撮影し、 メジャーの片側から一方向に向けて撮影します。四方八方から撮影すると、位置関係が分からなくなってしまいます。

7.水中用データシートの回収
 それぞれの調査が終了したら、その都度水中用データシートを回収し、データをチェックして再調査の必要が 無いか調べて下さい。チーム科学者が中心となって確認します。再調査の必要があれば、メジャーの回収前に行います。
 記入した水中用データシートを元に、コンピュータで報告用のデータシートにデータを投入し、 電子データを本部に提出しますので、データシートは丁寧に保管して下さい。

8.水面休息
 一回目の調査が終了し、メジャーの回収が終わったら、水面休息を取ります。参加者に調査方法などについての 疑問点があれば、この時にチーム科学者やチームリーダーが回答しておきます。
 十分に水面休息を取ったら、二回目の調査を上記の手順と同様にして行います。
水中用データシートは下記のようになっています。

【水中用データシート】
ベルト測線調査:魚類
調査地名
水深m 調査日
開始時間
終了時間
スタート地点GPS or コンパス角度
記録者

0〜20m25〜45m 50〜70m75〜95m
チョウチョウウオ類



コショウダイ類



フエダイ類



サラサハタ



ハタ類 30cm以上
サイズも記録




メガネモチノウオ



カンムリブダイ



ブダイ類 20cm以上



ウツボ類





ベルト測線調査:無脊椎動物
調査地名
水深m 調査日
開始時間
終了時間
スタート地点GPS or コンパス角度
記録者

0〜20m25〜45m 50〜70m75〜95m
オトヒメエビ



ガンガゼ類



パイプウニ



シラヒゲウニ



ナマコ (食用)



オニヒトデ



シャコガイ類



ホラガイ類



イセエビ類




以下は 無 低 中 高から選んで記入
サンゴ被害
 アンカー



 ダイナマイト



 その他



ゴミ
 魚網



 その他



コメント



稀な動物(種類/大きさ)
その他
白化サンゴ(サンゴ面積%と地域面積%)
サンゴ病気(型/%)


ライン測線調査:底質
調査地名
水深m 調査日
開始時間
終了時間
HC -ハードコーラル   SC - ソフトコーラル   RKC - 一年以内に死んだサンゴ
NIA - 富栄養化の指標となる海藻        SP - 海綿       RC - 岩
RB - 転石      SD - 砂      SI - 沈泥/クレー      OT - その他
0〜19.5m25〜44.5m 50〜69.0m75〜94.5m
0.0
10.0
25.0
35.0
50.0
60.0
75.0
85.0
0.5
10.5
25.5
35.5
50.5
60.5
75.5
85.5
1.0
11.0
26.0
36.0
51.0
61.0
76.0
86.0
1.5
11.5
26.5
36.5
51.5
61.5
76.5
86.5
2.0
12.0
27.0
37.0
52.0
62.0
77.0
87.0
2.5
12.5
27.5
37.5
52.5
62.5
77.5
87.5
3.0
13.0
28.0
38.0
53.0
63.0
78.0
88.0
3.5
13.5
28.5
38.5
53.5
63.5
78.5
88.5
4.0
14.0
29.0
39.0
54.0
64.0
79.0
89.0
4.5
14.5
29.5
39.5
54.5
64.5
79.5
89.5
5.0
15.0
30.0
40.0
55.0
65.0
80.0
90.0
5.5
15.5
30.5
40.5
55.5
65.5
80.5
90.5
6.0
16.0
31.0
41.0
56.0
66.0
81.0
91.0
6.5
16.5
31.5
41.5
56.5
66.5
81.5
91.5
7.0
17.0
32.0
42.0
57.0
67.0
82.0
92.0
7.5
17.5
32.5
42.5
57.5
67.5
82.5
92.5
8.0
18.0
33.0
43.0
58.0
68.0
83.0
93.0
8.5
18.5
33.5
43.5
58.5
68.5
83.5
93.5
9.0
19.0
34.0
44.0
59.0
69.0
84.0
94.0
9.5
19.5
34.5
4.5
59.5
69.5
84.5
94.5

ハマサンゴコロニー(3メートル以上)5つ
位置(m地点、最長の直径、それと垂直に交わる直径、高さ)
1.地点mサイズ      ×      高さ
2.地点mサイズ      ×      高さ
3.地点mサイズ      ×      高さ
4.地点mサイズ      ×      高さ
5.地点mサイズ      ×      高さ
白化サンゴ(サンゴ面積%と地域面積%)
サンゴ病気(種類/割合)

このページの最初に戻る