アラワイ運河を巡る論議

[Ala Wai contoroversy]
オアフ島のアラワイ運河は悪質な水を直接海に運んでおり、汚染の根源とみなされています。1922年から28年にかけて建築されたこの運河は、ワイキキ埋め立て計画の一環として土壌の浄化を目指したものとも、不動産計画の一部として運河両岸の農地の排水設備として設けられたとも言われています。

ワイキキの湿地はもともと排水機能を具えており、運河ができる前は自然水路が周囲の土地の排水を促していましたが、その反面、風雨(年間約380センチ)の後にはサンゴ礁に大量の泥水が流れ込んでしまうという、善悪両面がありました。当時の科学者チャールズ・エドモンソンは、ハードコーラルは河口付近に、そして淡水と砂泥に対する抵抗力の弱いサンゴは河口から離れたところに分布していることを発見し、サンゴの生育と淡水流に含まれる砂泥の量には相関関係があると唱えました。また、同じく20年代にはワイキキ周辺には23種のサンゴがあったものが、運河ができた後は、ワイキキの観光地化に伴い、わずか4種類にまで減少しています。

ワイキキの湿地は、周囲の谷地の排水と、水路上流と土壌の水分を吸収する役割を果たしていましたが、アラワイ運河完成後は、ワイキキは一層の排気ガス、化学肥料、廃棄物に悩まされ、そしてかつては雨水を吸収しろ過していた湿地もなくなり、結果として運河の汚染を招いたのです。

現在、約3キロにわたるアラワイ運河はカヌーやタイヤのごみ捨て場と化し、頻繁に底ざらえを行っています。2002年8月以降これまでに10万5千トンにのぼる沈殿物や廃棄物を除去していますが、こうした廃棄物は、サンゴ礁から6キロ離れた米環境保護庁の指定地まで運び、水深3万1,000余メートルの深海に捨てられています。これでは廃棄物や有害物質を直接海に投げ捨てていることとなり、長年の間サンゴの分布、多様性、潤沢性に悪影響を与えてきた可能性があります。

そこで問題となるのは、今後いかにして運河を浄化してゆくかということです。運河にさらに大量の水を流入することも提案されましたが、井戸水を使えば、さらなる汚染物質を流し込むことになります。下水処理と同じように化学薬品処理を行った場合、水中生物に被害が及びます。紫外線照射で除菌するという選択肢もある他、人工的に湿地化し、水を流入し、化学薬品も使うという混合的な方法も考えられます。  

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Coral in the News back number
September 2003