サンゴ礁に山火事の影響

[ A Fired Reef ]
1997年、インドネシア湾岸付近の熱帯林を大規模な山火事が襲いました。この地域は世界でもっとも多様性に富むサンゴ礁のひとつに数えられていましたが、6年たった今なお、不毛の荒地と化したままです。山火事で発生した灰煙が、当地スマトラ島西部メンタウィ島のサンゴ礁生態系の窒息の原因となったものとして非難されました。オーストラリア国立大学(ANU)のネリリー・エイブラム(Nerilie Abram)を中心とした研究チームは、サンゴ礁の上に降り積もった煙に含まれる栄養分が、赤潮として知られる藻類の大発生を引き起こしたと報告しています。赤潮はその地域のサンゴの酸欠を引き起こし、最終的には、オーストリアのグレートバリアリーフの4分の1ほどの距離も離れたはるか遠くのサンゴ礁の生態系を窒息に追いやったのです。このANUの報告により、インド洋メンタウィ島の400キロの長さに及ぶリーフにおけるサンゴや魚の壊滅の謎が解明されました。

一部の魚はリーフに復活したものの、サンゴは基本的には復活していません。壊滅状態にある生態系を再生させるには、他地域のリーフから回遊してきたサンゴの幼生が定着するのに頼るしか術はありませんが、それには50年から100年を要するものと思われます。リーフは現地の人々にとって日々の食料の源であり、旅行業、ダイビング業といった雇用の源でもあり、主な収入源です。地球温暖化や人間の森林地帯への進出が進むにつれ、山火事が起こる危険性も増大します。残念なことに、山火事の発生は周辺地域のリーフへも被害を及ぼし、被害を受けたリーフの再生の道をも絶つことになるのです。

赤潮の原因となる環境的要因については、影響を受けた地域のサンゴの成長停滞や化石化に関するANUの詳細な調査に報告されているとおりです。影響を受けた地域の周辺の海洋水についてさらなる研究を進めることにより、山火事とリーフの死滅との関連性が解明されました。

出所:Tropical Fires Mentawi Islands Reef

source:
Coral in the News back number
September 2003