観光業が及ぼすカリブ海地域サンゴ礁への影響

[ Impacts of Tourism on Caribbean Reefs ]

 観光業はカリブ海地域諸国の主な収入源です。しかし、カリブの人々に収益をもたらすその観光業が、旅行者の最大の楽しみであるサンゴに被害を及ぼし、死滅の危機にさらしています。
観光業によってもたらされる害は、直接的被害、間接的被害の2つに大別されます。

 直接的被害とは、ダイバーや観光用客船、海鮮食品需要の増大により生じる被害を指します。ダイバーが与える被害とは、繊細なサンゴを触ったり踏んだりといった程度で、一人のダイバーが与える被害は大きなものではありません。しかし、その数が6,000人を越すと、小さな害も積み重なり、被害の度合いは急激に拡大します。また、ボートのアンカーをサンゴの上に落として無意識の間にも繊細な組織を破壊してしまい、サンゴ礁に大きな被害を与えている場合もあります。また、そうした地域で観光客の海鮮食品需要が増大すれば、それに伴い現地の漁業関係者が周辺のサンゴ礁において過剰な漁獲を行うことにもつながり、サンゴ礁の減少を引き起こしかねません。

 間接的被害とは、観光業を下支えするのに必要な生活基盤から生じる被害を指します。被害の度合いについて数値測定したわけではありませんが、海沿いに林立するホテルは生活廃水を未浄化のまま海に廃棄しており、その結果水中植物が増殖し、サンゴがその犠牲となっています。また、観光業の支えとして海岸沿いに新たな建築物を建設することで沈殿物が増大し、周辺水域におけるサンゴの脱色や酸欠を引き起こす可能性も高くなります。

以上のように、観光業は環境に著しい被害を及ぼす可能性があり、慎重に監視、規制を行わなければ、観光客の目的である自然環境もあっというまに退廃することになりかねません。観光業によって生じる直接的被害を解決するには、観光客に対する教育と、観光客をサンゴ礁の保護に参画させることが必要です。間接的被害については、海岸沿いの建設計画の規制を厳格化することで緩和することが可能です。


source:
Coral in the News back number
September 2003